WCS一般

WCSは、1962年アジアから最初のRI会長に就任したニッティシ・ラハリー(インド)によって提唱された、人道主義に基づいた新しい形の国際奉仕の実践活動であり、当初は文盲対策、スラム街対策などが実施されました。
 WCS活動を容易にするための例外的措置として、1966年にRIは、1929年にダラス大会において決議された財政的援助要請の制限条項[決議 29-12]を撤廃して、金銭的援助を可能にしました。

<決議 29-12>
2. 如何なる事項に関しても、他のロータリークラブの協力を得んとする加盟クラブは、先ずそれぞれの地区ガバナーに対して、その目的と計画を提出し、その承認を得なければならない。
3. 如何なる加盟クラブも、先ず国際ロータリー理事会の承認を受けるまでは、他のロータリークラブ或は個々のロータリアンに財政的援助を求めてはならない。
(1929年ダラス大会)

 金銭が含まれるか否かを問わず、地区やクラブから特定の世界社会奉仕活動に関して協力や援助を要請する場合、一つまたは限られた数の地区かクラブを対象とし、全クラブを対象としないならば、財政援助懇請に課された制限条項に制約されないと考えられている。
(1966年RI理事会)

 財政的援助要請の制限撤廃は、技術供与やマン・パワーの提供のみでは実効の上がらないWCS活動に、全世界のロータリアンからの財政的援助を加えることで、大規模なWCSプロジェクトを可能にしました。
 WCSプロジェクトとは、ある国のロータリークラブが地域社会のニーズに応えて実施している飢餓、貧困、疾病、識字率向上などの社会奉仕活動を、他の国のロータリークラブや地区が人道的見地から、マンパワーや財政面の援助をすることですが、1997年からその適用が拡大されて、必ずしも要請側にロータリークラブの介在がなくても実施可能になりました。
 本来は無料検診、授産指導、教育、里親などロータリアン個人がボランティアとして活動するのが本筋ですが、スラム解消、簡易住宅建設、学校建設、緊急食料援助、保健衛生、井戸鑿掘、識字率向上などの大規模な事業が要請された場合は、クラブまたは地区レベルで、技術、資材、資金の何れかを提供して対処することもあります。

WCSプロジェクト交換

 年二回、RIから地区へ、WCSプロジェクト交換表が送付されてきます。交換表には、主に発展途上国のロータリークラブから寄せられた支援要請のプロジェクトが記載されています。これらのプロジェクトは現地のクラブが現実に実施している社会奉仕活動の内、もはや自分たちの力ではどうにもならないような事例について、マン・パワーや資材や資金の援助を要請するものですから、その内容は実態の伴った意義深いものばかりです。更に、理想的で効果的なWCSプロジェクトでは、援助を受ける人たちを、そのプロジェクトの計画、実施に、直接参加させることによって、自活自助の道を身につけさせると共に、事業の継続性を図っています。
 小規模プロジェクトとして教育里親制度、奨学金制度、学校設備、教材、開眼手術などの医療補助、井戸堀りなどがありますから、交換表の中から適切なプロジェクトを選んで、ロータリアン個人やクラブレベルで協力することが可能です。中規模または大規模のものは、クラブレベルでは財政的に不可能なものもあるので、地区レベルで取りまとめて実施することになるでしょう。
 実施するプロジェクトが恒久的な建物の建設とか給料の支払以外の、同額補助金が申請可能なプロジェクトなら、ロータリー財団委員会と協力してRIに申請すれば、WCS活動のために寄付する金額と同額が、財団から補助されるので、全体の活動資金が倍額になり、より効果的な事業が展開できます。
 なお、WCSプロジェクトを現地に赴いて調査するためのカールミラー補助金制度もあります。

現物拠出情報ネットワーク Donation-in-Kind Information Network (DIN)

 WCS活動を実施するために必要な物資や技術を登録すると共に、提供できる物資や技術を登録して、相互に情報を交換するシステムです。寄贈物資は実動するものなら中古や不用品でもかまわないし、技術はロータリアンの奉仕活動そのものであり、教育、医療、通訳などの労務提供もこれに含まれます。なお、寄贈物資の収集、分類、梱包などの労務もDINの活動であり、この作業にはロータリアン以外の職域や地域の人々の参加も奨励されています。
 時には、現物を送るよりも、現地で同じものを購入する資金を送る方が、安くつき、かつ、現地の経済を助ける結果となる場合もあるので、留意すべきです。
 DIN一覧表は提供側と要望側の情報別に年四回、発行され、WCSプロジェクト交換を補足し、WCS活動全般にわたる情報源として活用されています。

ロータリー・ボランティアーズ

1968年、発展途上国に対して、ロータリアンの技術や経営助言を提供する[海外ロータリー・ボランティア] Rotary Volunteers Abroad 制度が発足し、1979年に[ロータリー・ボランティア活動]と名称変更され、1992年より[ロータリー・ボランティアーズ]として、WCSの正式活動になりました。
 他のWCS活動と同様に、ボランティアの登録リストと要請リストがあり、管理、地域社会開発、教育、食料生産、保健、上下水/衛生に区分され、夫々の専門技術を提供する海外ボランティア活動です。
 期間は最低 4週間から 8週間と定められているので、早めのリタイアや、まとまった休暇を取ることができないという理由からか、日本人の参加は極めて低調です。なお、ロータリー財団のロータリー・ボランティア補助金プログラムから、実費旅費と一日50$の手当が支給されます。

(文責・・パストガバナー 田中 毅)


関連規約


<世界社会奉仕 (World Community Service WCS)>

WCSプログラムは、国際奉仕に属す活動である。ロータリアンは、このような活動を通じて、人々の生活を改善し、人々のニーズに応えるプロジェクトを実施する。そして、物質的、技術的、専門的援助を通じて、国際理解と親善を推進する。(85)

目標

  1. 援助を必要としている人々の生活の質を、ロータリーの国際奉仕を通じて、高めること:
  2. 異なる国のロータリー・クラブと地区が協力して国際奉仕プロジェクトを遂行するのを奨励す ること:
  3. 援助を必要とするプロジェクト、それに援助を提供したいという申し出についての情報交換の機会を効果的に提供すること:
  4. 国際規模の開発や文化上の問題について、さらに自主自助のプロジェクトを実施する重要性についてロータリアンの理解を深めること:
  5. RIと財団の関係プログラムと強調事項の参加者にWCSプログラムの提供するサービスを利用してもらうこと:
  6. ロータリー財団その他からWCSプロジェクトに授与される補助金についてロータリアンに知らせること:
  7. WCSの成功談を他のロータリアンに伝えること:
  8. 国際理解、親善、平和を育成すること(93)

WCSプログラムは、次の活動を含む。

  1. WCSの機会と活動を通じてロータリーの国際奉仕の目標を広く知ってもらうようにすること:
  2. WCSプロジェクト交換室の推進と活用:
  3. 適切であれば、地区レべルとクラブ・レべルにおいて国際奉仕員会とロータリー財団委員会の協力を推進すること:
  4. WCS活動を含む国際奉仕の牽引車として国際共同委員会を拡張すること:
  5. 災害救援プロジェクトの支援を推進すること:
  6. 2月22日の「世界理解と平和の日」の推進:
  7. WCSプロジェクトを寄贈品と奉仕活動で援助するための現物拠出情報ネットワークの活用:
  8. WCSプロジェクト実施の財源として世界社会奉仕カール・ミラー助成金と同額補助金を使うこと:
  9. 国際奉仕プロジェクト諮問委員会がWCS活動の有益な骨組となっている地域においては同委員会の目的と業績を推賞すること:
  10. 国際ボランテイア奉仕など、WCS活動にロータリアンを直接参加させること。(85)

地区とクラブはWCS小委員会を含む国際奉仕委員会を設置するよう推奨されている。その目標は、理解を深め、連絡を直結させ、あらゆる種類の国際奉仕の責任系統を明確にすることである。(85)

 クラブ会長とガバナーは、WCS小委員会委員長を、適切であれば、社会奉仕委員会の職権上の委員に任命するよう奨励されている。(88、90)

WCSまたは国際奉仕プロジェクトが、3地区以上のクラブを含むと思われる場合、第2章の「多地区合同活動」の項に記載されている方針を参照しなければならない

地区WCS委員会または小委員会は次のことをしなければならない。

  1. 地区内のすべてのロータリー・クラブに、他国のロータリー・クラブとWCSの提携をするよう奨励すること。この提携は、地区WCS委員会を通じて調整するよう奨励されている:
  2. 地区内各クラブとの定期的接触および地区の諸会合並びに都市連合会等を通じて、WCSプログラムに対する理解の増進を図り参加を推進すること:
  3. 他国のロータリー・クラブからWCSの援助を受けることができると思われる地元のニーズを見つけるよう地区内のクラブを激励すること:
  4. 地区内のクラブから報告されている実施中のWCSプロジェクトを審査し、それをガバナーに報告し、該当すれば、WCSプロジェクト交換室にプロジェクトを登録するよう力を貸すこと:
  5. WCS活動のために提供可能な地域社会内の援助資源を探し出すよう地区内クラブを督励すること:
  6. WCSを地区内のすべての関係報道機関(ロータリーとの関係の有無を問わず)に発表すること:
  7. 地区規模のWCSプロジェクトを実施すること:
  8. 地区内のWCS活動の記録を取り、定期的にガバナーおよび世界本部へ報告すること:
  9. 金銭は、世界本部から送金するので、RIを受取人とし、エバンストンの世界本部に送付するよう奨励すること。(88)

地区やクラブから特定のWCS活動に関して協力や援助を要請する場合、一つまたは限られた数の地区かクラブを対象とするならば、配布に関する―般規定に課された制限条項に制約されない。(66)

<世界社会奉仕プロジエクト交換>

RI事務局は、提唱ロータリー・クラブ、ローターアクト・クラブ、インターアクト・クラブ、ロータリー村落共同隊が援助を要請しているWCSプロジェクトの「登録」を整備している。ロータリー・クラブは2通りの方法でこの登録を活用することができる:

  1. 社会奉仕プロジェクトに援助を求めているクラブは、プロジェクトの詳細をプロジェクト交換 資料書式に記入して提出できる。この書式は、ガバナーと地区WCS委員会委員長を経て世界本部に送付する。書式に記入された情報はWCSプロジェクト交換一覧表によって公表される。WCSプロジェクト交換―覧表は、年2回発行され、ガバナー、ガバナー・エレクト、地区WCS委員長全員に送付する。
  2. WCSプロジェクト交換を支援したいクラブは、プロジェクト交換情報要請書式を提出する。この書式に、クラブが提供できる援助の種類や希望地域を記入して提出する。これを受理した世界本部からは、支援したい分野に沿って一つまたはいくつかのプロジェクトについての情報が送られてくる。情報を要請したからといって、そのクラブがWCSプロジェクトを引き受ける義務を負うことにはならない。

ガバナー、ロータリー・クラブが、ロータリーに合致した目的と活動を掲げる他団体と協力するのは妥当と思われる。但し、このような協力がWCSの実施に著しく役立つ場合に限られる。(85、88)

<現物拠出情報ネットワ―ク>

現物拠出情報ネットワーク(Donation-inーkind Information Network -DIN)は、WCSプログラムの中の推奨されている奉仕活動で、現物を寄贈しようとするロータリアンと、その寄贈品を活用できるロータリー・プロジェクト(または他のプロジェクト)とを結び付ける情報システムを提供することである。主として開発途上国のプロジェクトがこの寄贈品を利用できる。(85)

このシステムの目標は:

  1. WCS活動を支援して、寄贈品やサービスを提供しようとしているロータリアンに、その申し出を広報する機会を提供すること。
  2. WCSプロジェクトへの援助を必要としているロータリアンの援助源を増やすこと。
  3. WCSプロジェクト交換を効果的に補足し、WCS活動全般を支援し、全ロータリアンの情報源となること。(88)

(文責・・パストガバナー 田中 毅)